社長には妻と息子がいました
息子は私が入社当初は大学生で後に一緒に働きました
社長の息子だけあって商売の知識がありました
ある日、私が普通にお客様の車のドアを開けようとしたらノブがパキっと割れてしまった
たぶん元からヒビが入っていたのでしょう
私はお客様に「修理代の請求書を送ってください」と言ったのですが
お客様「え?私が修理依頼するの?」
社長の息子がすぐ気がついて自分の車のディーラーに修理依頼しました
社長の息子は「お客様をなるべく動かさない」という商売の基礎ができていたのです
社長と妻は別居し息子は中立だったようです
妻と仲が冷え切っていた社長は普通に愛人を作りました
近所のラーメン屋の女主人です
経営者同士気が合ったのだと思います
我々従業員もよく食べにいきました
愛人には小学生の息子がいました
親が熱愛中で小学生の息子は夜の邪魔ですよね?
そこで私が自宅で初代プレイステーションで遊んでるのを知ってる社長はこう言ったんです
「あの子一晩預かってくれんか?」
まあ預かってプレイステーションで遊ばせました
スーパーファミコンしか持ってなかったその子にはもうものすごく楽しかったようです
私はけっこう大人向けのソフトばかり持ってたんですが
行きつけのゲーム屋が店頭販促で使い終えた「体験版集」を2~300円で売ってたんで大量に持ってたんです
体験版とはいえものすごい種類があり子供向けもいっぱい
その子は私が預かると毎晩徹夜で私は365日早番なんでしんどかったです
弟夫婦が遊びにきたときその子預かってて4人でスゴロク系のゲームやりました
2時間くらいのモードでその子ぼろ負けで終わりそうなとき
「ぽち」
そのこいきなりリセットボタン押したんです
小学生ってこういうもの
その子は親さんにねだってプレイステーションを買ってもらいました
ソフトはなしで私の体験版を借りるということでね
でも私はその子をかわいがってたんでゲーム屋つれてって「1本だけ好きなの買ってあげる」と言いました
選んだのはクラッシュ・バンディグーというソフト
任天堂のマリオ・セガのソニックにソニーが対抗すべく出したキャラがクラッシュです
ゲームは3Dのマリオ系
1か月くらい預かってなかったらその子がクラッシュの腕前を見せたいといいました
預かってみてみるとドット単位で敵の攻撃を避けたり高難度ステージの制限時間を1/3くらいの時間でクリアしたり
すっかりクラッシュの名人になってました
物腰の柔らかい専務役の従業員は
「いいなあ、俺もゲームの先生なりたい」と言いました
だって大事な愛人の息子を私に人質にとられた社長は私に強気なこと言えなくなってたんです
ま、本当はゲームより学習マンガでもプレゼントしてあげましょう
「これでお子さんの成績あがるかもですよ?」とかね
それが人事部長とかで喜んでもらえたらこっちのターンです
子供は親の弱点です